最初の一枚は A(Av)モードで
要点 F値だけ自分で決め、明るさはカメラに任せる。いちばん失敗が少なく、いちばん学べる。
カメラには、全部をおまかせにするオートと、自分で決めるモードがあります。最初のおすすめは A(絞り優先・Canon では Av)。背景のぼけ方を決める F値だけを自分で選び、明るさに合うシャッタースピードはカメラが選びます。
ISO 感度は「ISO AUTO」にしておけば、暗い場所ではカメラが上げてくれます。まずは明るい屋外で、動かないものを撮ってみましょう。
| モード | 自分で決める | カメラが決める | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| P(プログラム) | なし(露出補正は使える) | F値とシャッター | とっさのスナップ、迷ったとき |
| A・Av(絞り優先) | F値 | シャッター | 人物・風景・街歩き。ほとんどの場面 |
| S・Tv(シャッター優先) | シャッター | F値 | 動きもの、滝や川の流れ |
| M(マニュアル) | F値とシャッター | ISO AUTO なら ISO | 夜景・星、明るさを固定したいとき |
よくある失敗
- モードダイヤルが M のまま別の場面で撮り、明るさが合わない。撮る前にダイヤルを見る
- 暗い場所なのに A モードで F値を大きくして、カメラが選んだシャッターが遅くなりぶれる
F値:背景のぼけと、ピントの合う範囲
要点 F値が小さいほど背景がぼけ、大きいほど手前から奥までくっきり写る。
F値は、レンズの中の光の通り道(絞り)の大きさを表す数字です。F1.8 のように小さいほど穴が大きく、光をたくさん取り込み、ピントの合う奥行き(被写界深度)が薄くなって背景がぼけます。F8・F11 のように大きいほど、手前から奥までピントが合って見えます。
ぼけの大きさは F値だけで決まりません。被写体に近づく、背景を被写体から遠ざける、ズームの望遠側を使う、センサーの大きいカメラを使う——どれでもぼけは大きくなります。
風景で F16 以上まで絞ると、光の回り込み(回折)で写真全体が少し甘くなることがあります。くっきり見せたい風景は、まず F8〜F11 から試しましょう。
| 撮りたい写真 | F値 |
|---|---|
| 人物を背景から浮かせる | F1.4〜F2.8 |
| 人物・料理(周りも少し見せる) | F2.8〜F4 |
| 街のスナップ | F4〜F8 |
| 集合写真(全員にピント) | F5.6〜F8 |
| 風景(手前から奥まで) | F8〜F11 |
このサイトの実例:F2.8 以下(小さい F 値)で撮った写真
このサイトの実例:F8 以上(大きい F 値)で撮った写真
よくある失敗
- F1.4 の人物で、ピントが目ではなくまつ毛や鼻に合う。ピントの合う幅がとても薄いので、瞳 AF を使うか少し絞る
- 風景を F2.8 のまま撮って、奥の山がぼける
シャッタースピード:動きを止める・流す
要点 速いほど動きが止まり、遅いほど動きが流れる。遅いほど手ぶれもしやすい。
シャッタースピードは、センサーに光を当てる時間です。1/1000 秒なら走る人や飛ぶ鳥も止まりやすく、1/15 秒より遅いと、動くものは流れて写ります。流れる水をなめらかに見せたり、車の光を線にしたりできるのは、この「流れ」を使っているからです。
手持ちで撮るときの昔からの目安は「1/焦点距離(35mm判に換算した値)秒より速く」。50mm なら 1/50 秒より速く、という考え方です。手ぶれ補正のあるカメラやレンズならもっと遅くても止まることがあり、画素の多いカメラでは目安より速くしたほうが安心なこともあります。
手ぶれ補正が止めるのはカメラの揺れだけです。動いている被写体のぶれ(被写体ぶれ)は、シャッターを速くしないと止まりません。
| 撮りたい写真 | シャッタースピード |
|---|---|
| 走る子ども・スポーツ・飛ぶ鳥 | 1/1000 秒より速く |
| 歩く人・街のスナップ | 1/250〜1/500 秒 |
| 止まっているものを手持ちで(標準レンズ) | 1/60〜1/125 秒 |
| 滝や川をなめらかに(三脚) | 1/2 秒〜数秒 |
| 夜の車の光を線に(三脚) | 数秒〜30 秒 |
このサイトの実例:1/1000 秒より速いシャッターで撮った写真
このサイトの実例:1/15 秒より遅いシャッターで撮った写真
よくある失敗
- 室内で A モードのまま撮り、カメラが選んだシャッターが遅くなって全体がぶれる。ISO を上げてシャッターを速くする
- 三脚に載せても、シャッターボタンを押す指の振動でぶれる。セルフタイマー(2 秒)かリモコンを使う
ISO感度:足りない光を補う
要点 上げると暗い場所でも明るく撮れるが、上げるほどざらつき(ノイズ)が出やすい。
ISO 感度を 100 → 200 → 400 と上げると、同じ F値・シャッタースピードでも写真が明るくなります。ただし ISO は光そのものを増やすのではなく、センサーが受けた光の信号を増幅して明るくしています。上げるほど、ざらつき(ノイズ)や色のにじみが目立ちやすくなります。
最初は ISO AUTO で十分です。上限を決められる機種が多いので、ざらつきが気になるなら上限を設定しましょう。
大事なのは順番です。ぶれた写真は後から直せませんが、少しのざらつきなら現像ソフトのノイズ低減で減らせます。暗い場所で迷ったら、ISO を上げてシャッタースピードを確保しましょう。
| 場面 | ISO |
|---|---|
| 晴れた日の屋外 | 100〜200 |
| 曇り・日陰 | 200〜800 |
| 明るい室内 | 800〜3200 |
| 夜の街を手持ちで | 1600〜6400 |
このサイトの実例:ISO 1600 以上で撮った写真
よくある失敗
- ISO 100 にこだわって、夜の手持ちでぶれる
- 暗く撮ってから後で大きく明るくする。暗い部分を持ち上げると、ノイズが目立ちやすい
明るさは3つの組み合わせ(「段」で考える)
要点 明るさは「段」で数える。1段=光の量が2倍か半分。どれかを1段動かしたら、別のどれかを1段戻せば同じ明るさ。
F値・シャッタースピード・ISO は、どれも明るさを変えます。そして、どれも同じ「段」という物差しで測れます。F値は約1.4倍(√2倍)、シャッタースピードと ISO は2倍ごとに1段です。
たとえば F4・1/250 秒・ISO 100 と、F5.6・1/125 秒・ISO 100 は同じ明るさです(F値で1段暗く、シャッターで1段明るく)。F8・1/125 秒・ISO 200 も同じ明るさ。明るさが同じでも、背景のぼけ方・動きの写り方・ざらつきが違います——どれを選ぶかが、写真の表現です。
| 設定 | 1段ずつ |
|---|---|
| F値 | F1.4 → F2 → F2.8 → F4 → F5.6 → F8 → F11 → F16 |
| シャッタースピード | 1 秒 → 1/2 → 1/4 → 1/8 → 1/15 → 1/30 → 1/60 → 1/125 → 1/250 → 1/500 → 1/1000 |
| ISO | 6400 → 3200 → 1600 → 800 → 400 → 200 → 100 |
数字を動かして、写真の変わり方を見る
絵で表した概念図です。実際の写真の明るさ・ぼけ・ぶれを正確に再現するものではありません。場面の明るさは一般的な目安です。
A モードでは、明るさに合わせてカメラが選びます
F5.6・1/125秒・ISO 100(曇りの日の屋外):ちょうど良い明るさ。背景は少しぼける、飛ぶ鳥は少し流れる。
露出補正とヒストグラム:明るさのつまみ
要点 A・S・P モードでは、露出補正(±)が明るさのつまみ。白飛びはヒストグラムで見る。
カメラは、画面全体が「ほどよい灰色」になるように明るさを決めます。だから雪景色や白い壁は灰色っぽく暗めに、夜景や黒い被写体は明るすぎに写りがちです。そんなときは露出補正で、白いものは+に、黒いものは−に動かします。
ヒストグラムは、写真の暗い所から明るい所までの量を山で表したグラフです。左が暗く、右が明るい。山が右端に張り付いていたら白飛び(真っ白で戻せない)、左端なら黒つぶれです。液晶の見た目は周りの明るさで変わるので、迷ったらヒストグラムを信じましょう。
| 場面 | 露出補正 |
|---|---|
| 雪景色・白い砂浜 | +2/3〜+1 2/3 |
| 逆光の人物(顔が暗い) | +1 前後 |
| 夕焼けの色を濃く | −1/3〜−1 |
| 夜景・黒い車 | −2/3〜−1 |
よくある失敗
- 補正したまま次の場面で撮り、全部が明るすぎる・暗すぎる。撮り終えたら 0 に戻す
- 夕焼けの空が真っ白に飛ぶ。空の明るさに合わせて−に補正する
ピント:どこを見せたいか決める
要点 止まったものは AF-S(ワンショット)、動くものは AF-C(サーボ)。合わせる場所はエリアで選ぶ。
ピントの合わせ方(AF の動き)は大きく2つ。AF-S(Canon ではワンショット AF)は、半押しで一度合わせたら固定。止まった被写体向きです。AF-C(Canon ではサーボ AF)は、半押しの間ずっと合わせ続けるので、動く被写体向きです。
どこに合わせるか(AF エリア)も選べます。狙った1点に合わせるなら1点(スポット)、動きを追うならゾーンや追尾。人物や動物なら、顔・瞳の検出が使える機種では使いましょう。
ピントが合わないときは、近づきすぎていないかも確かめます。レンズには、それ以上近づくとピントが合わない距離(最短撮影距離)があります。
| 被写体 | AF の動き | AF エリア |
|---|---|---|
| 風景・建物・料理 | AF-S(ワンショット) | 1点 |
| 人物(止まっている) | AF-S(ワンショット) | 顔・瞳の検出 |
| 子ども・動物・乗り物 | AF-C(サーボ) | ゾーン・追尾 |
よくある失敗
- 小さい F値で、半押しでピントを合わせてから構図を大きく動かし、ピントが外れる。合わせたい所に AF の点を動かす
ホワイトバランス:色を自然に整える
要点 最初はオート(AWB)。色の雰囲気を残したいときだけ、晴天・曇天などを選ぶ。
光には色があります。夕方や電球の光はオレンジ、日陰は青っぽい。ホワイトバランス(WB)は、白いものが白く写るように色を整える機能です。光の色は色温度(K・ケルビン)で表し、数字が小さいほどオレンジ、大きいほど青い光です。
オート(AWB)は夕焼けのオレンジまで「直して」薄くしてしまうことがあります。夕焼けの色を残したいときは「晴天」、もっと暖かくしたいときは「曇天」「日陰」を試しましょう(青い光を打ち消そうとして、写真が暖かくなる)。
| WB の設定 | 合う光 | 色温度の目安 |
|---|---|---|
| 晴天 | 晴れた日の日なた | 約 5000〜5500K |
| 曇天 | 曇りの日 | 約 6000K |
| 日陰 | 晴れた日の日陰 | 約 7000K |
| 電球 | 白熱電球・オレンジの照明 | 約 3000K |
よくある失敗
- 室内で WB を「晴天」にしたまま撮り、写真全体がオレンジになる
RAW と JPEG:完成品か、素材か
要点 JPEG はすぐ使える完成品。RAW は後から明るさと色を整えるための素材。
JPEG は、カメラが色や明るさを仕上げた完成品です。ファイルが小さく、すぐ共有できます。RAW は、センサーが受けた情報をほぼそのまま残した素材です。明るさやホワイトバランスを後から大きく直せますが、現像ソフトが必要で、ファイルも大きくなります。
迷ったら「RAW+JPEG」で両方を残すのがおすすめです。普段は JPEG を使い、うまくいかなかった写真だけ RAW から整えられます。Web に載せるときは、RAW を JPEG などに書き出してから使います。
スマートフォンで同じことをする
要点 スマホでも考え方は同じ。明るさはタップして出るスライダー、ぼけはポートレートモード。
多くのスマートフォンは、レンズの F値を変えられません。背景のぼけは、ポートレートモードが奥行きを計算して作っています。髪の毛やメガネの縁がぼけに溶けることがあるので、仕上がりは拡大して確かめましょう。
明るさは、画面をタップしてピントを合わせたあとに出るスライダーで変えられる機種が多いです(形は機種によって違います)。これがカメラの露出補正にあたります。空が白く飛びそうなら、少し暗くしてから撮りましょう。
暗い場所では、夜景モードが何枚も撮って重ねて明るくします。数秒動かずに構えるのがこつです。標準のカメラで触れない設定(シャッタースピードや ISO)は、マニュアル撮影のできるカメラアプリで試せます。
このサイトの実例:スマートフォンで撮った写真
今日の練習:同じ場所を3枚
要点 同じ場所から、設定を1つだけ変えて3枚。数字の意味が写真でわかる。
① A(Av)モードで、F値を一番小さくして撮る。
② 同じ位置から F8 にして撮る。カメラはシャッターを遅くして明るさを保つので、明るさはほぼ同じまま、背景のぼけ方だけが変わります。シャッターが遅くなるぶん手ぶれしやすくなるので、明るい場所で試しましょう。
③ F値はそのままで、露出補正を+1 にして撮る。今度は明るさだけが変わります。
3枚を並べて見比べれば、F値と露出補正がそれぞれ何を変えるのかが、写真でわかります。














