Journey Photo

第2章 ピント・基礎

ピントとぼけ|狙った所だけをくっきり写す

写真の「どこを見せるか」を決めるのがピントです。ぼけは偶然ではなく、4つの要素の組み合わせで自分で決められます。この章を読み終えると、撮る前に「ここにピントを置いて、背景はこれくらいぼかす」と言えるようになります。

ピントが合うとは、どういうことか

要点 ピントが「ぴったり」合うのは、カメラから同じ距離にある1つの面だけ。その前後は少しずつぼけていく。

レンズは、カメラから決まった距離にある面(ピント面)をいちばんくっきり写します。そこから前や後ろへ離れるほど、少しずつぼけていきます。

ただし、ぼけ方はゆるやかなので、ピント面の前後のある範囲は「ピントが合って見える」ままです。この範囲を被写界深度(ピントが合って見える奥行き)と呼びます。範囲が狭いことを「浅い」、広いことを「深い」と言います。

ピントが合って見える範囲(被写界深度)。左は浅く背景が大きくぼける。右は深く奥まで見える浅いF値が小さい・近づく・望遠ピントを合わせた所ここだけシャープ・前後はぼける深いF値が大きい・離れる・広角ピントを合わせた所広い範囲がシャープ
被写界深度のイメージ。濃い帯の中がピントが合って見える範囲(目安)。浅いと被写体だけが浮き、深いと手前から奥までくっきり写る。

よくある失敗

  • 「ピントが合う=画面全体がくっきり」と思い込み、F値を開けたまま風景を撮って奥がぼける

ぼけの量を決める4つの要素

要点 F値・被写体との距離・焦点距離・センサーの大きさ。この4つで、背景のぼけ方はほぼ決まる。

背景を大きくぼかしたいとき、レンズの F値(絞りの大きさを表す数字。小さいほど絞りが開く)を小さくする以外にもできることがあります。4つの要素に、背景との距離を加えて整理します。センサーは、レンズから入った光を受けて写真にする部品です。

背景をぼかしたいとき/くっきりさせたいときの動かし方(目安)
要素もっとぼかすくっきり見せる
F値小さくする(F1.8・F2.8)大きくする(F8・F11)
被写体との距離被写体に近づく被写体から離れる
背景との距離被写体を背景から遠ざける背景を近くに取り込む
焦点距離望遠側にする(85mm・135mm)広角側にする(24mm・28mm)
センサーの大きさ大きいカメラ(フルサイズ・中判)小さいカメラ(スマートフォン)
F値ごとの絞りの穴の大きさ。F値が小さいほど穴が大きく、1段ごとに光の量は半分になるF1.4F2F2.8F4F5.6F8F11F16← 穴が大きい・光が多い・背景がぼける穴が小さい・光が少ない・くっきり →
F値と絞りの穴の大きさ。F値が小さいほど穴が大きく、1段ごとに通る光の量は半分になる。

このサイトの実例:F2.8 以下(小さい F 値)で撮った写真

このサイトの実例:F8 以上(大きい F 値)で撮った写真

よくある失敗

  • F値だけを見て、背景のすぐ前に被写体を置いてしまう。背景が近いと、F1.8 でもあまりぼけない
  • 望遠で背景をぼかしたつもりが、被写体が小さくなりすぎる。近づける場面では、近づくほうが雰囲気を残せる

オートフォーカスの使い分け

要点 止まった被写体はシングル(AF-S)、動く被写体はコンティニュアス(AF-C)。ピント枠は、狙う所にいちばん近い大きさに。

最近のカメラは、ほとんどの場面でオートフォーカス(AF)に任せられます。ただし、AF の「動き方」と「どこを見るか」の2つを選べると、ピントを外す確率が大きく下がります。

AF の動き方(呼び名はメーカーで違う。ここでは一般的な呼び方)
動き方どんな動き向く場面
シングル(AF-S・ONE SHOT)シャッターボタンを半押しした所で、ピントを固定する風景・建物・料理・止まっている人物
コンティニュアス(AF-C・SERVO)半押し中、動く被写体にピントを合わせ続ける子ども・動物・スポーツ・乗り物
マニュアル(MF)自分でピントリングを回す暗い場所・星空・マクロ・ガラス越し
AF エリア(どこにピントを合わせるか)の選び方
エリア使い方向く場面
ワイド・全域カメラが探す。手軽だが、狙った所に合わないことがあるとっさのスナップ
ゾーンやや広い枠の中から探す動く被写体を追いたいとき
スポット・シングルポイント小さい1点。狙った所にぴったり合わせる風景・花・建築・目に合わせたい人物
顔・瞳検出顔や目を自動で探して合わせ続ける人物・動物(対応した機種)
  1. ピント枠を、見せたい所へ動かすタッチパネルでタップするか、ジョイスティックで枠を動かします。人物なら手前側の目、花ならいちばん見せたい花びらです。
  2. シャッターボタンを半押しするピントが合うと、音や枠の色の変化で知らせます。合っていなければ、被写体を変えるか、少し離れてもう一度。
  3. そのまま押し込んで撮る半押しのまま構図を少し変えてもよいですが、動くと、ピント面もずれます。近い距離(ポートレートなど)では、枠を動かす方法のほうが確実です。

よくある失敗

  • 動く子どもをシングルで撮り、半押ししたあとに動かれてピントが外れる
  • ワイド・全域のまま撮り、手前の枝や柵にピントが合ってしまう。狙った所にスポットで合わせる
  • 半押しのまま構図を変えて近距離の人物を撮り、ピント面が目からずれる

被写体ごとの「ピントを置く場所」

要点 迷ったら、見る人の視線が最初に向かう所に置く。人物と動物は目、花と料理はいちばん見せたい部分。

被写体別のピントの置き場所(目安)
被写体ピントを置く所ひとこと
人物・動物手前側の目顔が斜めなら、カメラに近いほうの目。まつ毛や鼻に合うと、印象がぼやける
花花びらの縁や、おしべ・めしべ全体を写したいときは、少し絞る(F4〜F8)
料理いちばん見せたい部分(手前の1品など)斜め上から撮ると、ピントの合う範囲に収まりやすい
建物・街並み手前から奥へ、全体を見せたい面絞り(F5.6〜F8)で奥行き全体をカバーする
風景次の節で詳しく

よくある失敗

  • 背景がきれいなので、つい背景にピントを合わせてしまい、肝心の被写体がぼける

風景のピント:手前から奥まで見せる

要点 F8〜F11 に絞り、ピントは「無限遠」ではなく、画面の手前寄りに置く。奥の一番遠い所は多少ぼけても気にならない。

広い景色では「手前の花から奥の山まで全部くっきり」を狙いたくなります。ピントの合う範囲は、合わせた位置の手前より奥のほうが広いので、一番遠い所ではなく、画面の手前から3分の1あたりに合わせるのが目安です。

  1. F8〜F11 に絞るF値を大きくすると、ピントの合う範囲が深くなります。ただし、F16 以上は光が回り込み(回折)、全体が少し甘くなることがあります。
  2. 手前の被写体にピントを置く手前に花・岩・道などの「目印」を入れ、その少し奥にスポットで合わせます。無限遠に合わせると、手前がぼけやすくなります。
  3. ライブビューで拡大して確かめるライブビュー(背面モニターに映像を出して撮る機能)で画面を拡大してピントを確かめ、必要ならマニュアル(MF)で微調整します。三脚があれば確実です。

よくある失敗

  • 絞りすぎ(F22 など)で、全体がもやっとする。まず F8〜F11
  • 遠くの山にだけピントを合わせ、手前の花がぼけた

動く被写体のピント

要点 AF-C にして、ピント枠で被写体を追い続ける。連写と、十分に速いシャッタースピードをセットで使う。

  1. AF を AF-C(コンティニュアス)にする半押し中、ピントが動く被写体を追い続けます。
  2. 枠は被写体より少し広めに顔・瞳・動物の検出を使えるなら ON に。使えなければゾーンで被写体を枠の中に入れ続けます。
  3. シャッタースピードを上げる走る子どもや鳥は 1/500〜1/2000 秒が目安。ピントが合っていても、遅いと被写体ぶれで甘く見えます。
  4. 連写で数を撮る動く被写体は、1枚で決めようとせず、連続で数枚〜数十枚撮って、いちばんよい1枚を選びます。

このサイトの実例:1/1000 秒より速いシャッターで撮った写真

よくある失敗

  • ピントは合っているのに、シャッタースピードが遅くて被写体がぶれる(ピンボケに見える)
  • 枠が背景に外れて、背景にピントが合う

ピントが合わないときの原因

要点 「ピンボケ」と「手ぶれ・被写体ぶれ」は見た目が似ている。まず原因を見分けてから直す。

写真が甘いときの見分け方
症状原因直し方
一部だけくっきり、他はぼけているピントの位置ずれ・被写界深度が浅いピント枠の位置を確かめる。少し絞る
全体が同じ方向に流れている手ぶれシャッタースピードを上げる。構えを安定させる
動いた被写体だけが流れている被写体ぶれシャッタースピードを上げる
どこにもピントが合わない・AF が迷う暗い・低コントラスト・近すぎる明るい所へ。十分に離れる(最短撮影距離)。コントラストのある部分に合わせる。MF にする
ガラス・柵・網の向こうに合わない手前の面に合うガラスに近づけて撮る。MF にする。スポットで合わせる

スマートフォンでのピントとぼけ

要点 画面をタップして合わせ、明るさのつまみで調整。ぼけは「ポートレートモード」と、被写体に近づくことで作る。

  • ピントを合わせたい所を、画面で軽くタップします。長押しすると、ピントと明るさを固定できる機種が多くあります。
  • タップしたあとの明るさは、出てきたつまみ(太陽のマーク)を上下に動かして調整します。
  • 背景のぼけは、「ポートレートモード」で擬似的に作れます。髪の毛や眼鏡の縁など、細かい所が不自然になることがあります。
  • 近づきすぎるとピントが合いません。ピントが合う距離まで下がるか、マクロの機能がある機種ではそれを使います。

このサイトの実例:スマートフォンで撮った写真

この章のまとめ

  • ピントが「ぴったり」合うのは1つの面だけ。その前後に、ピントが合って見える範囲(被写界深度)がある。
  • ぼけは、F値・被写体との距離・背景との距離・焦点距離・センサーの大きさで決まる。F値を変えられなくても、近づく・背景を遠ざけるでぼかせる。
  • 止まった被写体はシングル(AF-S)、動く被写体はコンティニュアス(AF-C)。ピント枠は狙う所に近い大きさにする。
  • 人物・動物は手前側の目、花や料理はいちばん見せたい部分にピントを置く。
  • 風景は F8〜F11 に絞り、画面の手前寄りにピントを置く。絞りすぎ(F16 以上)は全体が甘くなることがある。
  • 甘い写真は、ぶれかピントかを拡大して見分けてから直す。

外で撮ってみる(練習)

  1. 練習 1同じ被写体を、F値だけ変えて3枚

    マグカップや花など動かないものを、同じ位置から F2.8(またはいちばん小さい F値)・F5.6・F11 で撮ります。背景のぼけの違いを、画面を拡大して見比べましょう。

  2. 練習 2近づく・離れるでぼけを作る

    同じ F値のまま、被写体に近づいて1枚、離れて1枚。さらに、被写体を背景から遠ざけて1枚。ぼけ方の違いを確かめます。

  3. 練習 3風景で、手前にピントを置く

    手前に花や岩を入れた風景を、F8 でピントを手前、画面の3分の1、一番遠い所の3か所に置いて撮り比べます。

  4. 練習 4AF-C で動く被写体を連写

    歩く人・犬・走る電車などを、AF-C・連写・1/500 秒以上で撮り、ピントが合った枚数を数えます。

確認クイズ

Q1背景をより大きくぼかすための動かし方として、正しいものはどれ?

解説 近づく・F値を小さくする・背景を遠ざける・望遠側にする、のどれもがぼけを増やす方向です。逆の動きはぼけを減らします。

Q2走り回る子どもを撮る。AF の設定として最も適切なのは?

解説 動く被写体は、半押し中ずっとピントを合わせ続ける AF-C が向いています。シャッタースピードも十分に速くします。

Q3ポートレートで、ピントをどこに置くのが基本?

解説 見る人は目を最初に見ます。顔が斜めのときは、カメラに近いほうの目にピントを置きます。

Q4風景で、手前から奥までくっきり見せたい。おすすめの設定は?

解説 F8〜F11 は、被写界深度が深く、画質も保ちやすい範囲です。ピントの合う範囲は奥のほうが広いので、手前寄りに置くと全体をカバーしやすくなります。

Q5写真の全体が同じ方向に流れている。原因として最も考えられるのは?

解説 全体が同じ方向に流れているときは、カメラが動いた手ぶれの可能性が高いです。シャッタースピードを上げて確かめます。

よくある質問

ピントが合っているのに、なんだか甘い写真になります。なぜ?

シャッタースピードが遅くて手ぶれ・被写体ぶれが起きている、F16 以上に絞りすぎて光が回り込んでいる、レンズの汚れ、などが考えられます。まず、シャッタースピードを上げてみましょう。

単焦点レンズとズームレンズで、ぼけに違いはありますか?

同じ焦点距離・同じ F値なら、ぼけの量は基本的に同じです。単焦点は F1.4 などの明るいレンズが多いので、結果として背景をぼかしやすい、ということです。