動きの写り方は「速さ・向き・距離」で決まる
要点 止めたいなら速く、流したいなら遅く。ただし何秒にするかは、被写体の速さだけでなく、動く向きと距離でも変わる。
シャッタースピードの基本は第1章で触れました。ここでは一歩進めて、「結局、何秒にすればよいのか」を決める考え方を整理します。
同じ速さで走る人でも、止まって写るか、ぶれて写るかは条件で変わります。見るポイントは3つです。
| 見るもの | 止まりやすい | 止まりにくい(もっと速いシャッターが要る) |
|---|---|---|
| 動く向き | こちらへまっすぐ向かってくる | 目の前を横切る |
| 被写体までの距離 | 遠くて小さく写る | 近くて大きく写る |
| 焦点距離 | 広角(画面の中の動きが小さい) | 望遠(画面の中の動きが大きく見える) |
速さの調整は「段」で考えます。1/125 秒から 1/250 秒は1段速く、1/500 秒はさらに1段速くなります。写真がまだぶれているなら、まず1段、それでも足りなければもう1段、と順に上げていきます。
- 止めるか、流すかを先に決める「この瞬間をくっきり残したい」のか「動きの勢いを見せたい」のか。ここが決まらないまま設定を触ると、中途半端なぶれ方になりやすくなります。
- 目安の速さから始めるこのあとの表の値から始めます。止めたいときは、迷ったら少し速めを選びます。
- 1枚撮って、拡大して確かめる背面モニターで拡大し、動いている部分の輪郭を見ます。ぶれが残っていれば1段速く、止まりすぎて勢いが無いと感じたら1段遅く。
「全部を止める」だけが正解ではありません。たとえば、走る人の体は止めて、足元の砂ぼこりや手の先だけ少し流す、という写し方もあります。止めすぎると、動いていたことが伝わらない写真になることがあります。
よくある失敗
- 表の値を「その速さなら必ず止まる」と受け取る。条件で変わるので、必ず拡大して確かめる
- 目の前を横切る近い被写体を、遠くの被写体と同じ速さで撮ってぶれる
手ぶれを防ぐ:速さ・構え方・補正
要点 手持ちは「1 ÷ 焦点距離」秒より速く。そのうえで、脇を締めて構え、ボタンはそっと押す。
手ぶれは、カメラ自身が揺れたせいで、画面全体が同じ向きに流れる現象です。動く被写体のぶれ(被写体ぶれ)とは別物で、見分け方は第9章の辞典にまとめています。
| 焦点距離 | シャッタースピードの目安 |
|---|---|
| 24mm(広角) | 1/30 秒より速く |
| 50mm(標準) | 1/60 秒より速く |
| 100mm | 1/125 秒より速く |
| 200mm(望遠) | 1/250 秒より速く |
| 400mm(超望遠) | 1/500 秒より速く |
この目安は昔からの経験則で、人や条件で変わります。画素数が多いカメラは小さなぶれも見えやすいので、目安より1段速くすると安心です。センサーが小さいカメラは、35mm判に直した焦点距離で考えます(第5章)。逆に、手ぶれ補正があれば、目安より遅くても止まることがあります。
- 足を肩幅に開き、脇を締める肘を体に付けると、腕が一本の支えになります。座れる場所なら、膝に肘を乗せるとさらに安定します。
- 左手でレンズを下から支える手のひらにレンズを乗せるイメージで。ファインダーがあれば額に軽く当てて、3点で支えます。
- 息を軽く吐いて止め、ボタンはそっと押す半押しでピントを合わせてから、指でゆっくり押し込みます。「叩く」と揺れます。
- 近くの支えを使う壁・手すり・テーブルに体やカメラを寄せるだけで、ぶれにくくなることがあります。
よくある失敗
- 撮影後の小さな表示では気づかず、パソコンで見て初めてぶれに気づく。撮ったその場で拡大する
- シャッターボタンを強く押し込み、その反動でぶれる
- 「手ぶれ補正があるから大丈夫」と、被写体が動く場面でも遅いシャッターで撮る
被写体ぶれ:動くものを止める速さ
要点 手ぶれ補正では被写体ぶれは止まらない。止めるには、被写体に合わせてシャッタースピードそのものを上げる。
カメラがぴたりと止まっていても、被写体が動けばぶれます。しかも、ピントは合っているのにピンボケに見えるので、原因を取り違えやすいぶれです。
| 被写体 | 止めたいときの目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| ゆっくり歩く人 | 1/250 秒 | 手を振る・髪が揺れるときは少し速めに |
| 走る人・遊ぶ子ども | 1/500〜1/1000 秒 | ボールを蹴る瞬間などは速めに |
| 走る犬・猫の動き | 1/1000 秒より速く | 跳ぶ瞬間は特に速く |
| 自転車 | 1/500〜1/1000 秒 | ペダルの脚まで止めたいなら速めに |
| 走る電車・自動車 | 1/1000 秒より速く | 近くを通るほど速く |
| 飛ぶ鳥 | 1/2000 秒以上 | 羽ばたきまで止めるには、これくらいを目安にすることが多い |
この速さを確保する方法は4つあります。上から順に試すのが一般的です。
- 撮影モードをシャッター優先(S・Tv)にして、速さを自分で決める。明るさはカメラが F値で合わせる
- F値を小さくして(絞りを開けて)、光を多く取り込む
- ISO 感度を上げる。ISO AUTO にして、「これより遅くならない速さ」を決められる機種なら設定する(呼び名と設定場所はメーカーで違う)
- それでも足りなければ、少し被写体から離れるか、被写体が動く向きを変えてもらう
このサイトの実例:1/1000 秒より速いシャッターで撮った写真
よくある失敗
- ISO を 100 に固定したまま、暗い体育館でシャッターが遅くなってしまう
- 撮る前に設定を決め込み、被写体が予想より速くて止まらない。撮り始めの数枚で拡大して確かめる
- ピントが合っているのに甘いと思い、原因をピントだと決めつけて直す
流し撮り:被写体を止めて、背景を流す
要点 カメラを被写体と同じ速さで振りながら、遅めのシャッターで撮る。被写体はくっきり、背景は横に流れて、スピード感が出る。
流し撮りは、被写体を追いかけてカメラを動かすことで、被写体に対して背景が流れる効果を作る撮り方です。成功率が高くない撮り方なので、最初は「数十枚撮って数枚よければ成功」と考えると気が楽になります。
| 被写体 | 目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| 歩く人・ゆっくりの自転車 | 1/30〜1/60 秒 | 最初の練習に向く |
| 走る自転車・バイク | 1/60〜1/125 秒 | 背景の流れ方で調整 |
| 電車・自動車 | 1/60〜1/250 秒 | 速い被写体ほど、速めでも背景が流れる |
- 設定を決めるシャッター優先(S・Tv)で上の目安から。AF はコンティニュアス(AF-C・SERVO)、連写を ON にします。ISO は低めで、明るすぎるときは F値を大きくします。
- 背景を選ぶ縦の線や色の違いのある背景は、流れた線が見えて効果が出ます。無地の壁だと、流れていることが伝わりにくくなります。
- 体を構える足を、被写体が通る位置に向けて肩幅に開き、腰から上を回して追います。腕だけで追わないことが安定のコツです。
- 被写体が来る前から追い始めるピント枠を被写体に載せ、同じ速さで振り続けます。半押しでピントを合わせたまま、ちょうど正面に来るあたりで押します。
- 押したあとも振り続けるシャッターを押した瞬間に止めると、そこで揺れます。画面から被写体が出ていくまで振り切ります(フォロースルー)。
機種によっては、流し撮り用の手ぶれ補正モードがあります。縦方向の揺れだけを補正して、横の振りを邪魔しにくくする仕組みが多いです。呼び名や有無はメーカーで違います。
よくある失敗
- 遅くしすぎて、被写体まで流れてしまう。1/30 秒で失敗が続くなら 1/60〜1/125 秒に上げる
- 被写体を追うのを、押す瞬間で止めてしまう
- 背景が無地で、流し撮りの効果が出ない
長秒露光:水・光・雲をなめらかに
要点 三脚でカメラを固定し、数秒以上シャッターを開ける。動くものは流れ、動かないものはくっきり残る。
シャッターを数秒以上開けて撮るのが長秒露光です。滝や川が絹のようになめらかになり、夜の道路では車の光が線になります。人の目では見えない写真になるのが魅力です。
| 場面 | シャッタースピード | 準備 |
|---|---|---|
| 滝・川(なめらかに) | 1/2 秒〜数秒 | 日中は光が多いので、ND フィルターや PL を使う |
| 夜の車の光を線に | 数秒〜30 秒 | ISO を下げ、F8 前後に絞る |
| 花火 | 数秒〜十数秒(バルブ) | ピントは先に遠くへ合わせ、MF で固定する |
| 雲の流れ・人混みを消す | 数十秒〜数分 | 強い ND フィルターが要る |
日中に長く開けたいときは、レンズの前に付ける ND フィルター(色のつかないサングラスのように光を減らすもの)を使います。表記は ND8・ND1000 のように数字が大きいほど暗く、ND8 で約3段、ND1000 で約10段ぶん光を減らす、というのが一般的な目安です(ND0.9 のような濃度の表記もあり、メーカーで違います)。
- 三脚を立て、カメラを固定する風で揺れない低い高さ・安定した地面を選びます。ストラップが風でバタつかないよう、まとめておきます。
- ISO を最低に、F値を F8〜F11 にISO を最低にしてノイズを減らし、F値を絞って、シャッターを遅くできる余裕を作ります。
- ピントを合わせてから MF にするライブビューを拡大して確かめます。暗くて AF が迷う場面は、最初から MF で。
- セルフタイマー(2 秒)かリモコンで撮るボタンを押した指の揺れが、そのまま写真に出るのを防ぎます。
- 撮って、明るさと白飛びを確かめるヒストグラムで確認し、明るければ秒数を短く、暗ければ長く。カメラの最長(多くは 30 秒)を超えるときは、バルブ(B。ボタンを押している間、シャッターが開き続ける設定)を使います。
このサイトの実例:1/15 秒より遅いシャッターで撮った写真
よくある失敗
- 滝の白い水が白飛びする。少し暗めに撮り、ヒストグラムの右端が壁に当たらないようにする
- 手ぶれ補正を入れたまま三脚で撮り、かえってぶれることがある。機種によって切る指定があるので、説明書を確かめる
- 一眼レフなどで、ファインダーから入る光で写真が明るくなることがある。接眼部にカバーが付く機種では、日中の長秒で付けると安心
- 三脚の使用が禁止されている場所で立ててしまう。事前にルールを確かめる
連写とタイミング:決定的瞬間を逃さない
要点 動きのピークを予測して、少し早めに連写を始める。撮ったあとの選び方まで決めておくと、続けやすい。
シャッターを押してから実際に写るまでに、わずかな遅れ(タイムラグ)があります。さらに人間の反応にも遅れがあるので、「見えた瞬間に押す」と、決定的な瞬間は少し過ぎていることが多くなります。連写は、この遅れを埋めてくれます。
| モード | どんな動き | 向く場面 |
|---|---|---|
| 低速連写 | 1秒に数枚 | 歩く人・子どものスナップ |
| 高速連写 | 1秒に十枚以上の機種もある | スポーツ・鳥・動物 |
| AF追従つき連写 | 連写中もピントを合わせ続ける(AF-C と組み合わせる) | 動く被写体全般 |
| プリ連写 | シャッターを押す少し前からの数枚も記録する | 予測しにくい動物・鳥の飛び立ち |
- 連写で撮れる枚数には限りがあります。カメラ内のメモリー(バッファ)が一杯になると、書き込みが終わるまで連写が遅くなったり止まったりします。RAW や高画素では、早くいっぱいになることがあります。
- 電子シャッターは静かで高速連写に向く機種がありますが、速い動きが歪んで写る(ローリングシャッター)、蛍光灯や LED の下で横縞が出る、ことがあります。
- 動きのピークを予測しましょう。ボールが当たる瞬間・鳥が羽を広げた瞬間・犬が跳ぶ頂点——その少し手前から連写を始めます。
- 撮影の直後に、1回見直すぶれているもの・ピントが外れたものを先に外します。枚数が増える前にやるほど楽です。
- 同じ瞬間のかたまりから、1枚だけ選ぶ表情・姿勢・ピントが揃った1枚を選び、似た写真は残しすぎないようにします。
- 残す写真に印を付けるカメラ内の星印やパソコンの評価を使うと、あとで探しやすくなります。
よくある失敗
- 連写しっぱなしでバッファが詰まり、本当の瞬間に切れて撮れない。ピークの直前からにする
- ずっと連写して枚数が増え、選び切れずに放置する
- 電子シャッターで、蛍光灯・LED の下で縞が出る。縞が出る場面では切り替える
スポーツ・動物・乗り物の撮り方
要点 どの場面も「AF-C・速いシャッター・連写」が土台。そのうえで、場所ごとの条件に合わせて足す。
| 場面 | AF・モード | シャッタースピード | コツ |
|---|---|---|---|
| 屋外スポーツ | AF-C・S/Tv・連写 | 1/1000 秒前後 | 望遠で、動きの先を予測してピント枠に入れ続ける |
| 体育館・屋内競技 | AF-C・ISO AUTO | 1/500 秒前後を保つ | 暗いので、ISO は高くなってもよい |
| 動物園・ペット | AF-C・目の検出 | 1/500〜1/1000 秒 | 目線の高さに合わせると表情が出る |
| 走る電車・車 | AF-C・連写 | 1/1000 秒前後 | 来る向きとピント位置を決め、通過を待つ |
| 飛行機・ヘリ | AF-C | 機体は 1/1000 秒前後 | プロペラやローターは遅めにすると回転が見えることがある |
スポーツでは、望遠レンズで離れた位置から撮ることが多くなります。撮影できる場所・使える機材の決まりは大会や施設で違うので、先に確認しておきます。
動物は、目にピントが合うと印象が大きく変わります。動物園で柵やガラス越しに撮るときは、レンズを柵に近づけて F値を小さくすると、手前の柵がぼけて目立たなくなることがあります。
乗り物は、通る位置があらかじめ分かるので、ピントを置く場所と構図を決めて待つ撮り方が向きます。電車なら、駅や公共の場所のルールを守り、線路の近くには出ません。
このサイトの実例:焦点距離 135mm 以上(望遠)で撮った写真
よくある失敗
- ピント枠が背景に外れ、被写体がぼける。ゾーンを使うか、被写体を画面の大きめの位置に置く
- 動物園のガラスにフラッシュを使い、光が反射して写る。フラッシュは切り、ISO を上げて撮る
手ぶれ補正と三脚:使いどころを知る
要点 手ぶれ補正は手持ちの味方で、被写体の動きは止められない。三脚は、遅いシャッターを使うための道具。
手ぶれ補正(IS・VR・OIS など呼び名はメーカーで違う)は、カメラの揺れを打ち消す仕組みです。レンズの中で行うもの、カメラ本体のセンサーを動かして行うもの、画像処理で行うもの(動画でよく使われる)があり、組み合わせて使う機種もあります。
| 効く | 効かない |
|---|---|
| 手持ちでの小さな揺れ | 動く被写体のぶれ(被写体ぶれ) |
| 暗い場所で、遅めのシャッターを使いたいとき | 大きく動かしすぎたとき・歩きながらの撮影 |
| 望遠での微細な揺れ | すでに十分速いシャッターで撮るときは、効果が小さいことがある |
三脚の役割は、手ぶれ補正の限界を超えて、数秒以上のシャッターや、同じ構図で撮り直す場面を支えることです。
- 脚は、太い段から先に伸ばす細い段ほど揺れやすいので、必要な高さになるまで、太い段から順に使います。
- センターポールは、なるべく上げないポールを上げるほど先端が揺れやすくなります。高さが足りないときは、脚を伸ばします。
- 風が強いときは、重りを吊るすカメラバッグを中心のフックに吊るすと安定します。バッグが揺れて脚に当たらないようにします。
- 雲台をしっかり締めて、レバーを確かめる構図を決めたら雲台を締め、カメラ側のプレートが緩んでいないか見ます。
- セルフタイマーかリモコンを使うボタンを押す指の揺れも、遅いシャッターではそのまま写ります。
三脚が使えない場所では、壁・手すり・荷物を支えにしたり、手のひらサイズのミニ三脚や、豆の袋(ビーンバッグ)を使う方法もあります。
よくある失敗
- 手ぶれ補正を過信して、遅いシャッターで動く被写体を撮る
- 三脚を立てたまま、強い風を受けて揺れる。重りと、低い高さで対処する
- 三脚を緩く締めて、撮影中にカメラが傾く










